土佐丸日記


高知の土は知っている

山田くんにサヨナラ逆転ホームランを打たれて試合終了。
あたしたちの甲子園大会はこうして終わった。
「鳴門の牙」の異名に恥じないすばらしい球を投げた犬飼キャプテン。闘犬の気迫を思わせるすばらしい精神力を見せてくれた。
そのキャプテンの球を見事に打った山田くん。
実力のある者同士はお互いを認め合うというけれど、最後にキャプテンが山田くんと握手をしたのは、そうした気持ちを表わしたのだろうと思う。
キャプテンはその前に、甲子園のグラウンドに自分が持ってきた高知の土を撒いた。
自分たちが予選を勝ち抜いてきた血と汗の混じった高知の土。この土はキャプテンたちが野球にどれだけ打ち込んできたのか、どんなに一途に燃えてきたのかを知っている。
キャプテンは自分たちの野球への思いをこの土に託し、これから甲子園に集う高校球児たちの熱い思いに加えたいと思ったのだろう。
見かけによらずロマンチストだねぇ。

あたしたちは芦田旅館に帰り、帰り仕度をした。明訓高校はまだ帰ってきていなかったので、先にお風呂を使わせてもらって、制服に着替えた。
あたしも借りていた学生服から自分のセーラー服に着替えた。
荷物をまとめて玄関に置くと、キャプテンが合図してみんなは旅館の番頭さんの前に立った。
お世話になったお礼を言うと、番頭さんは涙を浮かべて感動して、「きいつけてな」と言ってくれた。
不良チームとの噂ばかりが耳に入るし、しかも甲子園に来る途中で行方不明にはなるし、獰猛な土佐犬は連れてくるし、すぐに同宿の明訓高校といざこざをおこそうとするし、本当に迷惑だったと思うけど、よく面倒を見てくださってありがとうございました。
あたしが別にペコリと頭を下げて挨拶すると、番頭さんはにこやかに「部長はんも大変でしたな。きいつけて帰りなはれや」と言ってくれた。
そのころには明訓高校も芦田旅館に帰ってきており、山田くんが見送りにきてくれた。
武蔵たちがバスに荷物を載せているとき、キャプテンが山田くんに「里中が決勝戦で投げられるように祈っているぜ。」と言っているのが聞こえた。
同じピッチャー同士。怪我の様子などからその辛さがわかるのかもしれない。

バスの中では、先輩たちもひとつの仕事をなしとげたあとの爽快感があるのか妙に明るかった。
あたしの男装を、今のセーラー姿よりも似合っていただのなんだのとからかってみたり、迷惑な話だ。
そうそう、とあたしは武蔵に近づき、こっそりと聞いた。
「ねぇ犬飼君。この学生服ってちょっと変なんだけど・・・」
「何が?」
着ている間中なんだかモゾモゾしていたのだけど、こんなものかな?と思っていたのだ。
裏地にいろいろ細工がしてある。引っ張ると袖が伸びたり縮んだり・・・。まさか高校3年間の間に身長が伸びることを想定して、学生服にこういう仕掛けを作ってあるとは思わないのだけど・・・。
あたしが渡した学生服を裏返して調べてみて、武蔵も首をひねった。
「なんだこれ?犬神のやつ、変なことしているのぉ・・・。返すときに聞いてみるぜよ。」

さぁ高知へ帰って、練習だ!
先輩たちは卒業してしまうけど、あたしたちには春の選抜があるんだもの。
絶対にまたここに来ようね、武蔵。
あたしはマネージャーに戻って、もう少し野球について勉強して、今度こそ明訓高校に勝てるように力を尽くすぞ!と決意を新たにした。

・・・・あっでもその前に、「甲子園特派員リポート」を編集しなくちゃ!
試合に夢中になっていて、明訓戦なんてほとんど覚えていない。
どーしよー・・・・・・・


なるとメモ

前回の終わりで甲子園に土を撒いた小次郎。今回の冒頭で同じシーンがでましたが、セリフが若干違います。今回のほうがこなれている感じ。録音のし直しをしたのでしょうか?前回のセリフがあまりにも「小次郎らしくない」と感じただけに、この言い直しは嬉しかった。
特に「明日の決勝戦、がんばってくれ」のあと「いいな」が付け加わったのはグッドです。この「いいな」という言葉も言い方も小次郎らしいんですもの。
帰り仕度をした小次郎たちは学生服をきています。途端に爽やか好青年になってしまいました。里中の怪我を心配する様子も、(誰のせいじゃ、誰の!)と思わずつっこみを入れたくなります。とりあえず、同じピッチャー同士だから、という解釈を入れてみました。ここで、武蔵の様子を見ながら山田にこそっと言ったあたり、怪我させた張本人武蔵の気持ちも慮っているようで、このあたりの心理状況は妄想のタネになりそうです。

これで「1年生夏甲子園編」は終わりです。
結局、戸浦くんはどうしてしまったのでしょう?いろいろ考えたのですが(実は戸浦くんは梶田くんのこと。おかあさんが再婚したかなにかで名字が変わったのだけど、1年生のときから呼びなれている戸浦でみんなは呼んでいた。でも選手登録をする際に梶田としたことから試合になってからは梶田と呼ぶことに統一した。とか。実は、「とうら」というのは名前で名字が「梶田」つまり「梶田とうら」という名前だったのだ!とか。)いまいちだったので、この件につきましては言及しないということでお願いしたいと思います(笑)

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