土佐丸日記


準決勝!土佐丸野球の始まり

大会8日目。
うちは第一試合で岩手八校と対戦し、勝った。やったね!ベスト4だ!
相変わらずのキャッチボール投法で点は入れられているんだけど、キャプテンをはじめとして打線はまずまず打っているし、守備のほうも打たれるわりには致命的なエラーもなく被害を最小限に留めている・・・・ような気がする。
点数的にも必ず1点差で勝っている。なんだかわざとやっているような気がしなくもないのだけど、あたしにはそんなところまではわからない。
試合が終わってみんなで芦田旅館に帰り、お風呂に入って汗を落としたあと、キャプテンは梶田先輩を連れて再び甲子園球場へ行った。
第3試合が終わったあと、明日の準決勝の組み合わせ抽選があるのだ。今度の抽選は各校のキャプテンがするらしい。
ロビーのTVで試合の中継を見た。
第二試合はもう終わっていて、福島県代表のいわき東高校が勝っている。第三試合は明訓高校が試合をしている。案の定、明訓が勝った。この2校とうちと、このあとの第四試合の勝者の4校が明日激突するわけだ。どこと試合するのかな?第四試合で対戦する2校はあまり聞いたことのない学校だから、どっちかがいいなぁ。いわき東は投手の緒方くんがすごいフォークボールとかゆう落ちる球を持っているそうだし、明訓高校は同じ旅館だから対戦するのはなんとなく最後まで延ばしたい気分。やりにくいじゃない?
でもあたしの祈りは届かなかった。
結局土佐丸の相手は明訓高校で、第二試合と決まった。
TVで見ていたら、明訓の土井垣キャプテンが握手しようと差し出した手を、うちのキャプテンったら無視して行っちゃった。もう〜キャプテンたら、大人じゃないんだからぁ〜。ほんのちょっと相手に合わせておけば、風当たりも少しは弱まるのに。キャプテンや先輩たちは鋼鉄の神経を持っているだろうけど、同じ土佐丸の生徒であるあたしの身にもなってくれ〜。

その夜。帰って来た梶田先輩が高知に電話しているのを聞いてしまった。
武蔵と話しているようだ。明日の試合までに甲子園に来るように言っている。キャプテンが呼んでおけと言ったらしい。
おお〜タケちゃん!いよいよ甲子園デビュー?
でもなぜ最初から連れて来なかったのかな?高知から歩いてくるのに、武蔵のあの巨体は目立ちすぎるからなのかしらん?

翌朝。いつも通りにあたしたちは芦田旅館を出た。
今日ここに帰ってきたら、どちらかの学校が帰り支度をすることになる。なんだか気が重い。

第一試合はいわき東が勝った。いいなぁ、決勝戦進出が決まって。
いわき東の緒方投手は明訓のサチ子ちゃんたちと親しげに話している。知り合いなのかしら?やはりあれくらい友好的だといいわよねぇ、高校生らしくて。うちの選手たちには望めないことだけどさ(くすん)。

試合が始まった。今日はうちが先攻だ。
トップバッターの井神先輩がバッターボックスに入った。バントをするんだかなんだかわからない中途半端な構え方。
井神先輩は結局三球三振でアウトになった。
2番の東先輩。同じ構えをしている。同じく三振。
3番の佐々尾先輩も以下同文。
早くもチェンジになってしまった。あーあ。
ベンチにいた選手もみんな素早く守備につく。ネクストサークルにいた犬飼キャプテンはそのままマウンドに登った。
あれ?何かおかしいな?あたしはその時違和感を感じた。佐々尾先輩はバットとヘルメットをこちらのベンチに向かって放り投げ、梶田先輩がグローブを持っていったの。でも犬飼キャプテンはバットを置きに戻らなかったし、グローブを持っていってあげた人もいない。なのに、ああやってマウンドに立ってグローブもちゃんとはめている。なぜ?もしかして、バットをもたずにグローブをはめてネクストサークルに居たってこと?じゃあ、あの3人の三振も予定通りだったってことなのかな?
まぁ、いいや。そのうちわかるでしょう。
明訓の攻撃は、あの高校生ばなれした体格容貌はうちの先輩たちにも劣らない、あたしと同い年の1年生だとはとても思えないような態度の大きい、神奈川代表なのになぜか大阪弁でしゃべる岩鬼くんだ。
キャプテンは今まで通りキャッチボール投法で岩鬼くんに投げた。ど真ん中3球を打てずにアウト。あの人もかわった人だよな〜。わざとやっているのか、本当に打てないのか、わからない。
そのとき、3塁側のスタンドが変にどよめいた。あたしはベンチの陰からろくろ首のように首を伸ばして3塁側スタンドを見た。巨漢が幅とって座っている。懐かしい人影だ。武蔵がやっと到着したのだ。あたしはこっそり手を振った。なんであんなところに座っているんだろう?ベンチに入ればいいのに。
武蔵に気をとられている間に、2番の殿馬くんがキャプテンのスローボールを打っていた。2塁打だ。いやーん、もう打たれた。まぁ、今までだってさんざん打たれてきたんだけど。
3番の山岡くんが三遊間に流し打ち。でもレフトの丹座先輩がショートの守備位置にきていてボールをとり、殿馬くんを3塁に行かせなかった。
なぁんてことをあたしが見てとれるわけないと思っているでしょう?
そのとおりなのです。
実はベンチの中でラジオを付けていたのだ。だって、うちが守っているときって全員が出払っていてベンチにはあたしひとりでしょう?誰も解説してくれないから、試合の展開がわからないんだもん。だから敵が攻撃している時だけ、ラジオをこっそり聞いているの。
で、ラジオのアナウンサーが興奮したようにしゃべっていた。
レフトの丹座先輩がショートの守備位置にきているのは危険なんですって。レフトにボールがぬけたらどうするんだって。
でも、レフトを見るとそこにはちゃんとうちの選手がいる。じゃあ、センターは?ライトは?と見ていくと、ちゃんとうちの選手が守っている。
それでアナウンサーは不思議そうに「土佐丸は10人で野球をやっているのでしょうか?」なんて言っている。
すごい!土佐丸マジックね!これが梶田先輩の言っていた土佐丸野球なんだろうか?
なんだかワクワクしてきた。


なるとメモ

準決勝前夜。檻の中の嵐に向かって語りかけている小次郎。おまえの一番好きな男がくるぞ、というのは原作にもあります。アニメではさらに「おまえをみていると俺の血が燃えてくるんだ。勝負にかける俺の血が」と燃えています。アニメの小次郎は勝負師なのね(^^;)
準決勝の対戦を決める抽選会に参加した小次郎の私服姿が素敵です。


次回予告
いぬこ: 犬飼君!いよいよ甲子園デビューね
武蔵: 真打は最後に登場するものぜよ。
いぬこ: でも、スタンドから登場するのってやりすぎよ。目立とうと思って、やーねぇ。明訓の岩鬼くんみたい。
梶田: くっそ〜岩鬼め。武蔵、仇をとってくれ。
武蔵: まかせておけ
いぬこ: こら武蔵!先輩に対してその口のききかたは何?なんだか甲子園にきてえらく態度が大きくなったじゃない。
鬼島: 武蔵は土佐丸野球の秘密兵器だからな。なぁ、キャプテン。
小次郎: そうだな。
いぬこ: 今までの相手とは違って明訓相手だといろいろ奥の手を出してくるのね。なんだか大変なことが起こりそう。キャプテンがいつも言っている「血の海甲子園」が実現するかも・・・。

次回の「土佐丸日記」は「秘密兵器!?土佐丸野球10人目の選手」です。

武蔵!いくら殺人野球だって本当に人を殺したらダメよ!

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